リズムゲーム「TR-REC」と同じ感覚でAIRA TR-8は扱えるのか、考えてみた。

いわゆるステップシーケンサーの振る舞いをそのまま携帯アプリに落とし込んだパターンシーケンスゲーム「Roland TR-REC GAME」。

TR-REC
▲TR-REC GAME

コレで遊んでいて、ある時ふと思いました。

「このゲームのお作法の延長で、実機のAIRA TR-8を扱うことはできるものだろうか」と。

TR-REC 1

Roland AIRAといえば、80年代Rolandのリズムボックスやベースシンセなど、いまやコレクターズプライスで取引されているモデルの動作を機種特有のクセに至るまで写し取るというマニア泣かせの作り込みに、現代的な仕様を組み合わせて再構築したグルーブマシンシリーズ。
グリーンを基調にした近未来感溢れる筺体デザインでもお馴染みの、特に欧米で評価が高いレトロモダンなモデルラインです。
中でもTR-8はテクノやニューウェーブなどが隆盛を誇った80年代初頭に登場したリズムマシンTR-808、TR-909の直系であり、画期的な利便性を持つ打ち込み方式・TR-RECを採用しており、TR-REC GAMEもこの特徴的な打ち込み方式を基にしてデザインされています。

TR-REC PLAY

TR-8のようなステップシーケンサーの場合、1小節を16分割にしたループが維持される為、16ステップのどこで音を入れてもリズムがヨレてしまうようなことはありません。4つ打ちのキックと2拍4拍のスネア、16分を刻むハイハットなどを基本のリズムとして打ち込んでしまえば、多少奇妙なタイミングでタム(HT/LT)やライドシンバル(RC)が鳴っていても「ユニークなアクセント」に化けてくれることが往々にしてあります。

打ち込みの方法としては打ち込みたいパーツ(BD、SDなど)を選び、本体下部の16個のボタンから任意のステップを選択する…というゲームそのままの操作感覚でOK。

TR-8でTR-RECモードを走らせて、とりあえず最初に4つ打ちのキックを入れてから他のパーツの配置を考える…というような感覚でも間違いなくオリジナルのビートを仕上げられるはずです。

ここまででもTR-REC GAMEで遊び慣れていればTR-8も使える!とは言えそうですが、実機TR-8では楽しく使えてもっともっと音楽的な深みが出せる機能があります。

TR-8 top

TR-REC GAMEにはなくて、実機のAIRA TR-8にあるもの。

まず一つ目は各リズムパートのフェーダーとその上にあるツマミです。

TR-8 knob

実際このフェーダーとツマミで何ができるかと言うと、フェーダーでは各パーツの音量を、ツマミでは音の高さ(TUNE)、音の伸び具合(DECAY)といった音作りの要点をいじる事ができます。

たとえばズシッとした重みがあって引き摺るような音にしたいと思ったらTUNEを反時計回りに、DECAYは時計回り方向に回していくといった具合。
ツマミの効きはあくまで音楽的に使える範囲で設定されているようなので、かなり大雑把に回すだけでも音の雰囲気の違いは感じられるはずです。

リズムの肝となるキック(BD)とスネア(SD)には音の立ち上がりを調整するATTACK、音圧感を高めるCOMPも用意されているので、クラブミュージック特有の圧縮感のあるキックやアタックの強いパツパツに張ったスネアなども演出可能。

フェーダーと演奏の組み合わせとしては連打フレーズなどを打ち込んだパーツの音量を上げ下げしてやることで、機械的なシーケンスフレーズに有機的な動きを与えることができます。

またミュートボタンを使ってパーツの音を一旦切った後、フェーダーを一番下まで下げてミュートを解除し、徐々にフェーダーを上げてフェードインしてくるような演出でも使われます。

TR-REC GAMEになくて、実機のAIRA TR-8にあるもの。

二つ目はエフェクターツマミです。

TR-8 Effect1
TR-8のエフェクターにはDELAY、REVERBに加えて特殊効果を生み出すSCATTERがあります。

エフェクターをリズムフレーズに組み込むというのは近年のEDM楽曲ではよく用いられる手法ですが、TR-8でもREVERBやDELAYを16ステップの任意の位置でトリガーすることができるSTEPボタンが用意されています。
あまり多用するとディレイやリバーブの反響音がリズムの構成音にカブってしまい、ビート感があやふやになってノリを損なってしまうこともありますから気をつける必要がありますね。

TR-8 Effect2

SCATTERは、特にキャラクターの強いエフェクトで、音が寸断されてより機械的でスリリングなビートに聴こえるようないわゆるグリッチ効果を演出してくれます。

基本的には10種類のグリッチパターンの中から好みのパターンを選んで掛かりの深さを10段階で決める、という形になりますが、このグリッチパターンはどれもかなりクセが強くパターンを把握するのも大変なくらい「音が暴れる」効果が飛び出します。こちらもまた勢いのあるグルーブを殺さないようにタイミングを見計らった使い方がポイントになります。

「TR-808/909」の神話的イメージが先行してしまいマニア向けな印象が漂うAIRA TR-8ではありますが、実際触ってみるとゲームの延長感覚でも充分に使いこなせるお手軽なリズムボックス。

KORG VOLCAシリーズではノブもボタンも小さくて物足りない、でもNative Instruments MASCHINEシリーズのようなPCまで含めた大掛かりなセットになるのはイヤだという方にもぜひ一度お試し頂きたいところです!

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