全7モデルを一気聴き!Fenderインイヤーモニターシリーズを聴き比べてみました!
昨年の国内販売開始からはや1年が経過したFenderインイヤーモニターシリーズ。
先日新たにラインナップに加わったフラッグシップモデル・FXA9やリモコンつきエントリーモデル・CXA1なども含めた全7モデルを聴き比べてみました!
・ドライバーユニット:BA型
・再生周波数帯域:12Hz~22kHz
・インピーダンス:21Ω(at 1kHz)
・感度:121db/1mW
・ケーブルの取り外し:可
【高域のクリアさ】・・・・☆☆☆☆☆
【中域の押し出し】・・・・☆☆☆☆☆
【低音の迫力】・・・・・・・・☆☆☆☆★
【全体のバランス】・・・・☆☆☆☆☆
インイヤーモニターシリーズの新たなフラッグシップモデルとなるFXA9はBA(バランスド・アーマチュア)型ドライバーをなんと総計6基も搭載。
高域用に1基、中域用に1基、低音とサブウーハーにそれぞれ2基ずつ振り分けられており、BA型の泣き所とも言える低音再生力を徹底的にフォローしたドライバー構成を採用しています。
上下左右の音の広がりを余すところなく再現する定位感、張りのある中域から生まれる立体感は文句の付け所がない完璧な仕上がり。
各ドライバーへの負荷が抑えられているからか、音量を上げていってもミックスが破綻する気配を全く感じない、余裕の再生力は圧巻の一言です。
クリアさを追求したハイエンドなインイヤーモニターでありがちな各楽器のつながりの悪さ、アンサンブルのまとまりが失われてしまうようなバラバラ感は少なく、明瞭でありながら一体感を楽しめる稀有な仕上がり。
どんな音楽もひと際美しく楽しく聴けますが、特にプログレッシヴロックやオーケストラ、あるいはEDMなど楽器構成が多く音像描写が複雑な楽曲のリスニングにオススメです。
・ドライバーユニット:ダイナミック型
・再生周波数帯域:6Hz~23kHz
・インピーダンス:16Ω(at 1kHz)
・感度:112db/1mW
・ケーブルの取り外し:可
【高域のクリアさ】・・・・☆☆☆★★
【中域の押し出し】・・・・☆☆☆★★
【低音の迫力】・・・・・・・・☆☆☆☆★
【全体のバランス】・・・・☆☆☆★★
インイヤーモニターシリーズのベーシックグレードとなるFXA2はダイナミック型ドライバーを一基搭載。
少し低音に膨らみを持たせたような味付けながら、全体的に落ち着いた印象で各楽器同士のつながりが良く、散らばり感の少ないまとまりのあるサウンドが楽しめます。
立体感や奥行きの広がりはあまりない為、やや平坦なトーンに感じられるかも知れませんが、過不足なくアンサンブルを冷静に聴けるという点でステージ用インイヤーモニターとしては正解かと思いました。
4ピースのロックバンドや少し古めなオルタナティブロック、パンクバンドなど、楽器構成がシンプルな楽曲のリスニングにオススメです。
・ドライバーユニット:バランスド・アーマチュア型
・再生周波数帯域:19Hz~21kHz
・インピーダンス:36Ω(at 1kHz)
・感度:120db/1mW
・ケーブルの取り外し:可
【高域のクリアさ】・・・・☆☆☆☆★
【中域の押し出し】・・・・☆☆☆★★
【低音の迫力】・・・・・・・・☆☆☆★★
【全体のバランス】・・・・☆☆☆☆★
FXA5はBA型ドライバーを2基搭載したミドルクラスモデル。
各楽器の分離が良く、ダマにならないので雑味、濁りが少なく、クリアですっきりした爽やかな耳当たりでした。
低音の迫力の面ではダイナミック型ドライバー搭載モデルに劣りますが、キックのアタックやベースのピッキングノイズなどがはっきりしているので生々しさが感じられます。
イヤホン側で余計なことをせず、出てきたサウンドをそのまま伝える「ライブな」ステージ用インイヤーモニターといった趣なので、レコーディングでもコレを使って弾いたり歌ったりすると、かなり気持ちよく録音ができそうだと思いました。
楽曲内の構成音数が多いポップス、カントリー、ラテンロック、クラシックなど煌びやかな音楽にオススメです。
・ドライバーユニット:ハイブリッド型(ダイナミック型1基+BA型1基)
・再生周波数帯域:6Hz~22kHz
・インピーダンス:16Ω(at 1kHz)
・感度:109db/1mW
・ケーブルの取り外し:可
【高域のクリアさ】・・・・☆☆★★★
【中域の押し出し】・・・・☆☆☆☆☆
【低音の迫力】・・・・・・・・☆☆☆☆★
【全体のバランス】・・・・☆☆☆★★
ダイナミック型ドライバーとBA型ドライバーを一基ずつ搭載したハイブリッドデザインを採用したFXA6。
キックとベースのサスティン、ギターの中低域などを含めたアンサンブルの重量感があり、非常にヘヴィでラウドなトーン。
反面スラップベースやスネア、ハイハットのアタック、ボーカルのリップノイズなど、キレに相当する部分は控えめな印象でした。
奥行き方向の聴こえ方が独特で、聴く音源によっては原音とディレイ・リバーブ音が分離して聴こえることも。
全体的なまとまり感、アンサンブルの一体感はやや欠けるもののローミッドの情報量の多さと盛り上がりがあるので、ヴォーカリストやギタリストがステージ用インイヤーモニターとして使った際には嬉しいポイントになるかも知れません。
ラウドロック、ネオグランジ、ポストハードコア、ハウスなど音圧と重量感たっぷりの音楽にオススメです。
・ドライバーユニット:ハイブリッド型(ダイナミック型1基+BA型2基)
・再生周波数帯域:6Hz~24kHz
・インピーダンス:16Ω(at 1kHz)
・感度:110db/1mW
・ケーブルの取り外し:可
【高域のクリアさ】・・・・☆☆☆☆★
【中域の押し出し】・・・・☆☆☆★★
【低音の迫力】・・・・・・・・☆☆☆☆☆
【全体のバランス】・・・・☆☆☆☆☆
ダイナミック型ドライバー1基とBA型ドライバーを2基搭載したハイブリッドタイプの進化型となるFXA7。
FXA6並みの重低音-中音域の図太さはそのままに、高域の抜けの良さが加味されたバランスの良さが素晴らしく、耳付きが派手で張りのあるエネルギッシュなサウンドを楽しめます。
全体的にはややドンシャリ傾向ですが、アタックがはっきり出てくる分、中音域に存在する歌が引っ込むこともないので聴いていて気持ちよくノレる感じがします。
FXA5、FXA6で物足りない何かを感じてしまったら、コレを試せばきっと解決してくれることでしょう。
細部の再生力の高さからミックスの粗が目立ってしまうこともあるので、ステージ用インイヤーモニターとして使うにはキッチリ音を作りこめる良いサウンドエンジニアが必要になるかも知れません(笑)
ロックからニューメタル、R&B、EDM、トランスなどレンジが広く特に低音が出てくる音楽にオススメです。
・ドライバーユニット:ダイナミック型
・再生周波数帯域:14Hz~22kHz
・インピーダンス:16Ω(at 1kHz)
・感度:116db/1mW
・ケーブルの取り外し:可
【高域のクリアさ】・・・・☆☆★★★
【中域の押し出し】・・・・☆☆☆★★
【低音の迫力】・・・・・・・・☆☆☆☆★
【全体のバランス】・・・・☆☆☆★★
ダイナミック型ドライバーを一基搭載したエントリーモデル・DXA1。
一般的なイヤフォンに近いシェルデザインを用いながらも薄くスリムに仕上げられており、装着時のフィット感は良好です。
サウンドの傾向は低音重視に感じられましたが、ボリュームを一段上げたかのようなパワフルな再生力は特筆モノ。
小音量でも十分な量感を得られるので「ちょっと良いイヤフォンがほしい、でもあんまり無難なのはイヤ」とお考えの方に最適なモデルです。
・ドライバーユニット:ダイナミック型
・再生周波数帯域:14Hz~22kHz
・インピーダンス:16Ω(at 1kHz)
・感度:110db/1mW
・ケーブルの取り外し:不可
【高域のクリアさ】・・・・☆☆★★★
【中域の押し出し】・・・・☆☆★★★
【低音の迫力】・・・・・・・・☆☆☆☆★
【全体のバランス】・・・・☆☆☆★★
CXA1はエントリークラスのDXA1をベースにiOS対応の3ボタンリモコン付きケーブルを採用したカジュアルユース向けの新モデル。
仕様の部分ではDXA1とほぼ同様の形式、スペックとなっていますが、ケーブル変更の影響か、DXA1よりも低音が多めに出てくる印象でした。
相対的に高域のヌケや中域の立体感はやや不足気味になりますが、手に入れやすい価格帯のモデルの中でボトムエンドの重さを追求するならば、リモコンを使わないとしてもDXA1ではなく敢えてCXA1を選ぶ、というのもアリかもしれません。
「普段使いに便利で、とにかく低音重視でノレるヤツ」をお求めの方にはぜひお試しいただきたいモデルです。
Fenderインイヤーモニターシリーズ全7モデルのご紹介、お楽しみいただけましたでしょうか?
楽器プレイヤーの方々からすると「エフェクター1個からミドルクラスのギターやベースが1本買えちゃうようなプライスのイヤフォン」というのは興味があってもなかなか手を出しづらい、というのが本音のところかと思います。
とはいえ、演奏者にとって「求める音」のお手本を教えてくれたのは、数々の名盤たちであったはず。
さまざまな新旧の機材に目を向ける前に「ちょっと良いイヤフォン」を手に入れて、知ってるつもりの音源から改めて「求める音」の道しるべを聴き出してみるのはいかがでしょうか?
ちなみにワタクシはFXA5を手に入れるべく、日々ガンバッております。。。