Pioneer DJ発のサンプラー、「TORAIZ SP-16」の企画担当者にいろいろ聞いてみた。

今年4月、Pioneer DJから突如として発表された「TORAIZ SP-16」。

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Pioneer DJからサンプラーのリリース、しかもシンセサイザーの巨匠 Dave Smith氏との協業製品ということで、兼ねてからDTMersでも注目していました。

そんな「TORAIZ SP-16」、メーカーサイトでもあまり詳しく語られておらず、詳細が気になっていたのですが、プロトタイプが概ね仕上がったとの話を聞きつけ、早速Pioneer DJにお邪魔し、製品の詳細や開発の経緯を伺ってきました。

※なお、写真は開発中のものです。実際の商品とは異なる場合があります。

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インタビューに応えてくださったのは、企画担当のPioneer DJ 株式会社のモンペティさん。ご自身もDJ/トラックメイカーとして活躍し、現場の意見を開発に取り入れています。

-まずは、この製品について詳しく教えてください!
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TORAIZは「トーライズ」と読むのですが、何といっても最大の特徴は、スタンドアローンのサンプラーである点です。近年、サンプラーと言えば、PCとソフトを組み合わせて、トラック制作やパフォーマンスをするものが増えてきていますが、それに対しTORAIZ SP-16は、PC不要のスタンドアローン型です。ソフトのインストールやシリアルの入力といった面倒な作業が必要ありません。箱を開けてスピーカー等と接続すれば音が出せます。またプロフェッショナルユースにおいても、ステージ上でPCを見る必要がないので、パフォーマーのショーマンシップにも配慮できるかと思います。

-音源(サンプル)は内蔵されているんですか?
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Loopmasters提供の音源が2GB分入っています。本体には、8GBのフラッシュメモリを搭載していて、そのうちの2GBを使用しています。もちろんユーザーの任意で8GB分フルに使用することもできます。

-出力端子が8つありますね?
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本体で曲作りができるんですが、ミックスダウン、マスタリングとなると、DAWへ音源をとり込むことになると思うので、それを想定しています。

-CDJとのLINK接続はどんなメリットがあるんでしょうか。
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同期させたときにBPMのずれも心配ないことですね。DJで曲をつないでいくとの僅かな差が生じる場合がありますが、LINK機能を使えば、ビート単位での同期演奏が可能となり、ライブユースでCDJと合わせる場合により安心して演奏に集中できます。
(※最新のファームウェアにアップデートすることで利用可能。)


-(やっぱりここが気になる…)Dave Smith氏との協業のきっかけは何だったんですか?

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Pioneer DJは、世界的にクラブの定番となっているCDJから、ホームユースのDJコントローラーまで幅広い製品のリリースを通して、おかげさまで多くのDJの方に愛されるブランドになりましたが、現状のユーザー層を「音楽制作」をキーワードに拡大したい、という考えが数年前からあったんです。

デジタルでハイファイなイメージのPioneer DJに対し、アナログの楽器作りをしているDave氏に、ある意味反対側へのアプローチをかけたかたちです。

Dave氏をPioneer DJに呼んでミーティングもしましたし、こちらからDave氏のもとへ行ったりもし、ミーティングを重ねる中で、最終的に「フィルターをつけよう」という話になったんです。

-DJにおけるフィルターの文化ってある意味Pioneer DJが推し上げてきたようなところもありますからね。そこにアナログシンセのフィルターを持ってきたわけですね。
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はい。Dave氏も、「カーティス・フィルター(※)」に代表されるProphetシリーズのフィルターサウンドに強い自信を持っており、前向きだった経緯もあるのですが、試作基盤が日本に送られてきて聞いてみたとき、その滑らかなかかり具合は、Pioneer DJのデジタルの技術とはまた違って、非常に感動しました。

Pro 2、 Prophet-6で使われているローパスフィルターの回路と、Prophet-6で使われているハイパスフィルターの回路をベースにDave Smith氏の監修を受けながら出音に対してフィルターの効果が際立つよう調整しています。

※カーティス・フィルター:Prophetシリーズで採用されているDave Smith サウンドの魂とも言えるフィルター。

(フィルターは、マスターにかかるようになっている。チャンネルごとにかけられるような今後のアップデートを期待したいところ。)

-若者を中心としたクラブシーンにおける「Pioneer DJ」とシンセサイザーの中でも伝統的なブランドの「Dave Smith Instruments」というのは、ユーザー層がかけ離れているようにも思いました。
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そこが狙いでもあって、「音楽制作をやっていてDJをやりたい人」「DJをやっていて音楽制作をしたい人」の垣根を取れればな、という思いがあります。そういった意味でも、いかに楽器のように演奏できるかというか、本体だけで操作が完結するワークフローにこだわりました。

-カラーで大型のディスプレイ搭載していますね。
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はい、しかもタッチパネルです。波形も大きくカラーで表示されますので、細かなエディットもスピーディーに行えます。パッドの色とディスプレイの色も同じにできますので視認性も高いです。16トラック全てにタイムストレッチが可能なので、CDJ 16台分とも言えるスペックです。近年は様々なサイトで簡単に音の素材を仕入れることができるので、音楽制作の経験がなくても、「TORAIZ SP-16」で気軽に始めていただけるかと思います。

-ステップシーケンサーも搭載されているんですね!
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はい、こちらもトラックカラーを把握しながら効率よく入力できます。また、各ステップは、緩やかな曲面と表面にシボ加工を持たせ、押し心地にもこだわりました。「流し打ち」って個人的に呼んでるんですけど、一気に全部のステップを点灯させるのも非常にスムーズです。

-16個のパッドとステップシーケンサーが両方あるって珍しいですね?
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ヒップホップとかハウスとか、携わっているジャンルによって、使ってきたハードウェアも違うと思うんです。それぞれで培ったものを別のジャンルで生かせるようにという意図があります。

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Pioneer DJ スタンドアローンサンプラー、「TORAIZ SP-16」。

DJコントローラーの普及において多くのDJを生み出してきたPioneer DJですが、ユーザーが同質化することなくクリエイティブな方向へ文化を昇華させたい、そんな思いの詰まった意欲作です。

コンピューターを使った音楽制作は本当に便利ですが、制作において直感を失わないワークフローは非常に重要なもの。かつてのようなハードウェアが生み出す音楽が世を取り巻くシーンにも期待がかかります。

 

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