名器復刻|KORG、「ARP 2600-FS」を発表!
KORGから「ARP 2600-FS」が発表されました。
ついに、1971年に発表された、伝説の名器ARP2600が復刻されます。
ARP 2600 が当時のままのサウンド、当時のままの外観、当時のままのサイズで、一回限りの完全限定生産で復活します。シンセサイザー黎明期に登場して以来、最も重要な名機の1つがコルグにより復刻されます。
ARP ODYSSEYに続き、米ARP Instrument 社の共同創業者であるDavid Friend 氏をアドバイザーに迎え、また創始者である故Alan R. Pearlman 氏に敬意を込めて、APP 2600 オリジナルの回路を忠実に再現。ARP ならではの安定したオシレーターをはじめとする充実のモジュール群はもちろん、スプリング・リバーブや内蔵スピーカーに至るまで完全に再現しています。さらに2世代切り替え可能なフィルターやXLR バランス・アウトなどの新機能に加え、ARP 3620 デュオフォニック・キーボードにはアフタータッチやアルペジエーター/シーケンサーも追加。また日本で生産されるこのARP 2600FS には、本体とキーボードをまとめて収納・運搬できるキャスター付き専用ハード・ケースもセットになっています。
ARP 2600 は単なるシンセサイザーではありません。完結したサウンド・デザイン・スタジオです。各モジュールが分離したモジュラー・シンセとしての自由度の高さと、制作またはパフォーマンスのための楽器に求められる直感性を同時に備えています。豊富なオシレーターやEG、フィルター、アンプに加え、スプリング・リバーブや1 ペアのモニター・スピーカーを搭載。他にもリング・モジュレーター、ラグ&ボルテージ・プロセッサー、エンベロープ・フォロワー、オーディオ・プリアンプ、クロック同期スイッチ、ノイズ・ジェネレーター、サンプル&ホールド・モジュール、シグナル・インバーター、AUX ミキサー、マルチプル・ジャックなどを備え、ビンテージ・モジュラー・システムならではの多彩な音作りが可能です。ARP 2600 FS には、これら多彩なモジュールが、オリジナル同様の堅牢なレザー貼り木工ケースに全て収まっています。
ARP 2600 では、これらのサウンドを回路レベルで再現。ARP Instruments 社の共同創業者であるDavid Friend 氏の監修のもと、細かなパーツ選定や、細部に渡る調整を施し、その特長的なシンセシスを実現しました。
ARP 2600 は、フロントパネルのほとんどのスライダーやスイッチがそれぞれ特定のコントロール・ソースとあらかじめプリパッチされています。そのためパッチ・ケーブルを使用しなくてもすぐにARP 2600 を演奏することが可能。もちろん、パッチ・ケーブルを使って内部接続をキャンセルし、自由なパッチングによる音作りの可能性も無限に備えています。また接続可能なシグナル・フロー図がフロント・パネルに分かりやすくプリントされています。
ごく初期のモジュラー・シンセサイザーではかさばる6.3mm のパッチ・ケーブルが多用されていましたが、ARP 2600 では当時としては珍しい3.5mm ジャックを採用しています。同じパネル面積でより多くのパッチ・ポイントを装備でき、これが多彩な音作りを可能にしました。ほとんどのパッチ・ポイントは各モジュールのコントロール類の下に配置され、音作りや演奏の際にパネルが見やすく、パッチ・ケーブルが邪魔にならず、高い操作性をキープしたまま、複雑な音作りを可能にします。もちろん、各モジュールは他のモジュラーやユーロラック・モジュラーとの接続も可能です。
ARP 2600 FS では、ARP 2600 のキーボードとしては後期型となる3620 キーボードを復刻。ポルタメント内蔵、2 ボイスの演奏ができるデュオフォニックに対応し、トリガー・モードはシングルとマルチの切り替えが可能です。ビブラートはキーボードに内蔵のLFO でコントロールでき、LFO 波形も3 種類が使用できます。また今回は、これらの機能やデザインを完全再現しつつ、さらに大幅に改良。コルグの誇るフラグシップ・シンセ・キーベッドを採用したフルサイズ49 鍵は、新たにアフタータッチに対応しました。ビブラートのコントロールはもちろん、パッチングにより自由に効果をアサイン可能です。さらにオリジナルにあったリピート機能を拡張し、アルペジエーターを新たに追加。パターンを入力して再生できるシーケンサー・モードも搭載しています。キーボードとメイン・ユニットの接続には8 ピンDIN ケーブルを採用しました。
ARP 2600 最大の特長といえば、各モジュールをパッチングして自由かつ複雑な音作りができるモジュラー構成です。1つのコントロール信号を分岐して複数のモジュールを同時にコントロールするのに便利な、並列接続タイプのマルチプル・ジャックも装備しています。3系統のボルテージ・プロセッサーはCV の変化をスケーリングできるほか、アッテネーターとしても活用できます。CV の変化を平滑化し、ゆっくりとした変化を作る出せるラグ・ジェネレーターも搭載しています。ノイズ・ジェネレーターはノイズの周波数成分をスライダーで連続可変でき、ホワイトからピンク、ロー・フリケンシーやそれぞれの中間など多彩なノイズを出力できます。エレクトロニック・スイッチは内部クロックまたはサンプル&ホールドのスピードなど、外部クロックに同期が可能。また外部オーディオ信号の加工に便利なプリアンプとエンベロープ・フォロワーも搭載しています。
オシレーター・セクション
ARP シンセサイザーのVCO はチューニングの安定性の高さが特長です。3 系統のオシレーターにはそれぞれイニシャルとファインのチューニング・スライダーを装備。現代の復刻モデルならではの滑らかなスライダー動作が、さらなるサウンドの追い込みを可能にします。またどのオシレーターも通常の音源として使うだけでなく、LFO としてモジュレーションにも活用可能(LFO はARP 3620キーボードにも内蔵しています)。各オシレーターとも複数の波形を同時に出力でき、波形はノコギリ波、矩形波、三角波、サイン波、パルス波を内蔵しています。また、オシレーター2 と3 はパルス波のパルス幅を調節でき、オシレーター2 はPWMも可能です。オシレーター同士をオーディオ領域でモジュレーションさせて、アナログのFM サウンドを作り出すこともできます。
フィルター・セクション
ARP 2600 は4ポール(-24dB/Oct)のVCF を搭載しています。オシレーターと同様、フィルターにもファイン・チューニングのスライダーを装備し、フィルターを発振させた際のピッチ調節に活用できです。フィルターの入力ミキサーには各オシレーター、ノイズ・ジェネレーター、リング・モジュレーターからの出力が立ち上がっています。オリジナルのARP 2600 は、生産時期により様々な仕様変更が行われていました。外装の変更もあれば、サウンドにより直結した変更もありました。フィルターは大別して2つの世代に分かれ、今回のARP 2600 FSではその両世代のフィルター回路を搭載。TYPEスイッチで切り替えることができます。これは復刻ならではの特徴といえます。
エンベロープ・ジェネレーター
ARP 2600 には2 基のEG が搭載されています。1 つは4 ステージ構成のADSR エンベロープ、もう1 つは2 ステージのAR エンベロープです。キーボードを使用せずともエンベロープを手動でスタートできるマニュアル・スタート・ボタンも装備しています。エンベロープ・モジュールからはゲートとトリガーの両方の信号が出力でき、他のモジュラーやユーロラック・モジュラーとパッチングするのに活用できます。
アンプ・セクション
VCA セクションでは出力レベルを調節できます。コントロール入力にはリニア(CV 変化が比例関係)入力とエクスポネンシャル(CV 変化が指数関係)のジャックをそれぞれ装備。イニシャル・ゲイン・スライダーではVCA の常時出力(VCA のCV のオフセット電圧)レベルを調節できます。
スプリング・リバーブから、スピーカーへ。
VCA から出力されたオーディオ信号は、ステレオ・ミキサー・セクションから、ARP 2600 のサウンドを特徴づける内蔵のスプリング・リバーブ・タンクを通ります。そこからメイン・アウトプットやヘッドフォン端子、またフロントパネルに取り付けられた内蔵のL/R スピーカーに送られます。巨大なフルサイズならではのサウンドの圧力を、外部モニターと接続することなく一身に体感できます。
プラグイン、そしてプレイ。
今回のARP 2600 FS は、メイン・オーディオ・アウトとして2 系統(L/R)のXLR 端子を新たに搭載。レコーディング機器やPA などとDI ボックスやラインマッチング・トランス不要でダイレクト接続が可能です。またMIDI はDIN コネクターのIN、OUT、THRU のほか、USB も追加しています。フットスイッチ端子は3620 キーボードに3 系統装備し、ポルタメントのオン/オフや2 ノートのインターバル・ラッチなどをハンズフリーで操作できます。また、本体フロントパネルには外部オーディオ信号の加工に便利なプリアンプ入力ジャックも装備しています。
オリジナルARP 2600 の重要性は、いくら誇張しても誇張し足りないものがあります。ARP 2600 のデビューは1971 年。ARP 2600 はパワフルなモジュラー・システムを、モダンでポータブル、しかも極めてプレイアビリティの高いシンセサイザーとして確立し、独自のポジションを築きました。以後約10 年にわたり、ARP はアメリカで、あるいは世界で、最大のシンセサイザー・メーカーとしての地位を維持しました。ARP 2600 は多方面から高い支持を集めていました。Alan R. Pearlman とDavid Friend による整合性の高い設計は、教育/アカデミック関連での用途にも最適でしたし、そしてもちろん、初期のシンセ・マニア層にもシンセサイザーの音作りを学ぶのに最適な機種でした。また、あらゆるジャンルのプロ・ミュージシャンも、ARP 2600 の驚異的なサウンドとわかりやすいパネル・レイアウトに惹き寄せられていきました。R2-D2 の「声」は、サウンド・アーティストのBen Burtt がARP2600 で作った音です。数十年を経た現在でも、ARP 2600 はビンテージ・シンセサイザーとして最も注目を集めるシンセサイザーの1 つであり、多くのミュージシャン、プロデューサー、サウンド・デザイナーが求め続けています。1960~70 年代当時のモジュラー・シンセサイザーは、電源モジュールを搭載したキャビネット・ケースに必要なモジュールをセットし、パッチ・ケーブルで接続して使用するという点では、現代のユーロラック・システムとほぼ同じです。他のシンセ・メーカーはモジュラー・シンセサイザー特有の難解さを削ぎ落としたシンプルなシンセサイザーの開発を推し進めていた一方で、ARP 2600 は使いやすさと分かりやすさを重視しつつも多様なモジュールをすべて備えていました。この点において、ARP 2600 は1 台でサウンド・デザイン・スタジオと呼ぶのにふさわしい、まさに異彩を放つシンセサイザーでした。
【最大同時発音数】
■ デュオフォニック時に2 ボイス、通常はモノフォニック
【VCO-1(ボルテージ・コントロールド・オシレーター1)】
■ 波形:ノコギリ波、矩形波
■ 周波数レンジ:約0.03Hz̃30Hz(ロー・フリケンシー・モード)、約10Hz̃10kHz(オーディオ・モード)
■ 電圧制御方式:1V/oct
【VCO-2(ボルテージ・コントロールド・オシレーター2)】
■ 波形:ノコギリ波、パルス波(パルス幅可変式)、三角波、サイン波
■ 周波数レンジ:約0.03Hz̃30Hz(ロー・フリケンシー・モート)、約10Hz̃10kHz(オーディオ・モード)
■ パルス幅:10%-90%
■ 電圧制御方式:1V/oct
【VCO-3(ボルテージ・コントロールド・オシレーター3)】
■ 波形:ノコギリ波、パルス波(パルス幅可変式)
■ 周波数レンジ:約0.03Hz̃30Hz(ロー・フリケンシー・モート)、約10Hz̃10kHz(オーディオ・モード)
■ パルス幅:10%-90%
■ 電圧制御方式:1V/oct
【VCF(ボルテージ・コントロールド・フィルター)】
■ タイプ:TYPE I(前期型ローパスフィルター 24dB/oct)、TYPE II(後期型ローパスフィルター 24dB/oct)
■ 周波数レンジ:約10Hz-10kHz
■ レゾナンス:1/2-自己発振
【VCO(ボルテージ・コントロールド・アンプリファイア)】
■ コントロール電圧:AR タイプ(内部接続)、ADSR タイプ(内部接続)
【ノイズ・ジェネレーター】
■ ノイズ・スペクトラム・タイプ(ホワイト、ピンク)
【リング・モジュレーター】
■ タイプ:アナログ乗算器
■ 入力信号(内部接続):VCO- 1 ノコギリ波、VCO- 2 サイン波
【サンプル&ホールド】
■ サンプル入力:ノイズ(内部接続)
【オーディオ・アウトプット端子/フロント・パネル(LEFT、RIGHT OUTPUT 端子) 】
■ コネクター:φ3.5 mm モノラル・フォーン端子
■ 最大出力レベル:+9dBu@10kΩ負荷
■ 出力インピーダンス:1.2kΩ
【オーディオ・アウトプット端子/サイド・パネルR】
■ コネクター:XLR 端子
■ 最大出力レベル:+4dBu@600Ω負荷
■ 出力インピーダンス:1.2kΩ