-浅倉大介氏×ローランド三木社長 トークセッション 「~Synthesizer Now and Future~」-

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ここは、東京・渋谷。

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「JD-Xa」「AIRA Modularシリーズ」等、フランクフルトメッセで発表となったローランド製品の国内発表会がここ、duo music exchange にて行われました。(以前の記事⇒JD-Xa 以前の記事⇒AIRA Modular)

製品デモンストレーションのほか、浅倉大介さんとローランド三木純一社長によるトークセッション「~Synthesizer Now and Future~」が行われましたので、内容をまとめました。

-おふたりにとってRolandのシンセサイザーとは…-

浅倉:「10代のころ、SH-101をバイトでお金貯めて買いました。Jupiter-8 なんかは、憧れていたけど、 買えなかったんで、当時秋葉原にあったショールームでカタログをもらってずっと見ていましたね。最近ではJupiter-80なんかもあり、ローランドのシンセは、僕にとってなくてはならないものになっています。」

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▲SH-101(1983年発売)

三木:「時代は、さかのぼるのですが私が入社したのが1977年で、前の年にSYSTEM-700が発売され、続いてMC-8が発表された時代。まさにローランドが世界の頂点を目指すぞ、とのろしをあげた頃だったかと思います。入社当時で右も左もわからない時代でしたが、SYSTEM-700には、やはり憧れていました。当時、240万したもので、とても買えませんでしたが、大きなポスターがあって、これがかっこよくて、欲しくて欲しくて…。何とか入手してアパートの壁に貼って、喜んでいました。」

三木:「あとは、会社のなかでサウンドエンジニアというか、音をエディットするキャリアが長かったので、初期のサンプラー S-50 とか、S-770 のライブラリから始まって、JV-1080、JV-2080、JV-3080という音源モジュールがあって、あのあたりも携わってました。」

浅倉:「名機ですよね。僕、JV-1080を5台、JV-2080を3台、持ってますよ 笑」

三木:「あれは、映画音楽や楽曲制作などでも相当使って頂いてますけども、エクスパンションボード(音色拡張ボード)があって、それのチームのマネジメントをしていていました。世界一の音色を作るぞ、っていうことでチーム一丸となって、次々とエクスパンションボードをリリースしていましたね。」

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▲イシバシ楽器にも時折中古で入荷する「JV-2080」。当時の音楽制作の定番音源ラック。

浅倉:「そういった、音色の「資産」、ちゃんと受け継がれていて、すごいですよね。いまでは INTEGRA-7 なんかに収録されて、音色番号も入っていて。」

三木:「そうですね、エクスパンションボードだけでなく、そこから他のローランド製品にも音色供給していたので、(音色が)資産になっています。」

浅倉:「社長の積み重ね(功績)ですね!」

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▲ローランド歴代の音色も使用可能な音源モジュール「INTEGRA-7」。

-JD-Xシリーズについて-

三木:「まず、JD-Xiのほうですけども、私の方で、ノンキーボーディスト向けの製品を作ったらどうか、ということでテーマを与えて、ブレーンストーミングが始まったんです。」

浅倉:「ノンキーボーディストっていうのは、どういう方ですか??」

三木:「シンセサイザープレーヤーということではなくて、だからといって、アマチュア や趣味指向の方というわけでもなく、パソコンで音楽を作っている人、ベーシスト、ボーカリストなどの方々です、そういった方々が、気軽にシンセを触ってフレーズ作成や音色作成できたらどうかな、と。両手でバリバリ鍵盤を弾くわけではないので、音程や強弱が入力できればいいということで、ローランド初のミニ鍵盤となり、小型軽量コンパクトで、どこへでも持ち運びができるシンセができました。私自身も出来上がって驚いたのは、TR REC(パターンシーケンサー)がついていたことです。

浅倉:「僕もびっくりしました、かっこいい!と思って。」

三木:「パターンシーケンサーが搭載されることで、アナログとデジタルの演奏だけでなく、フレーズの作成ができるようになるので、全然違うアプリケーションで、また違った可能性出ててきたな、と。」

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▲アナログ、デジタル2つの音源を搭載したクロスオーバーシンセサイザー「JD-Xi」、パターンシーケンサーも内蔵。

三木:「JD-Xaの方は、(JD-Xiと)クロスオーバーというコンセプトは共通なんですが、中身は全く別物です。アナログとデジタルのいいところを使って、Xaという新たなキャラクターのもつローランドの最先端シンセを作りたいということで、チームメンバーがかなりこだわって作りました。

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▲6月発売予定のJD-Xa

三木:「たとえば、シンセってエンベロープを最短にすると、パツパツいうじゃないですか? あれってオケのなかで、抜けを出すためのに重要とされていますよね。なので、いろいろなシンセサイザーの音の立ち上がりを比べてみて、一番いいところを時間をかけて詰めていました。他に、ツマミの動き方やLFOなんかも。 Jupiter-8 とも並べて、波形やかかりかたは参考にするんですけど、当時のLFOはビブラートをかけるのが通常ですから、今のように極端に早いレートにしてオシレーターに変調をかける発想はなかったと思うんですけど、JD-Xaは、そのあたりのレンジもスローからファストまで、開発に際してかなりチャンレンジしています。Xaならではの音が出る製品に仕上がったと思います。」

浅倉:「アナログシンセってベースから中域は得意とするけど、高音域での音の立ち上がりってどうかなっていうところがあって。最初に製品を触らせてもらったときに、マニアなんでやっぱ比べちゃうんですよ 笑。そして、やっぱアナログの方が早いですよね。立ち上がりの早いアナログ音色を使ってかなり攻撃的な音色を作ることができました。」

三木:「私、今開発のフロア(大部屋)で、みんなと一緒に仕事をしていて、開発中の製品って基盤がむき出しで、その辺に置いてあるんですけど、ある日見ると、赤いんですよ、基盤が…。なんて赤いの?って聞いたら、アナログだから赤くしました、って。下着もおしゃれか、みたいな 笑」

浅倉:「ローランドのホームページでも、みれますよね。緑と赤の基盤が。」

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▲JD-Xaの基盤。左がデジタルで、右がアナログ。

三木:「せっかく赤くしたんだったら、お見せしようということで、ビデオも撮って、今日もそこに展示させて頂いています。普段ないことなので、ペイントする基盤メーカーさんは大変だと思いますが 笑。開けないと見られないですけど、クロスオーバーの概念を体現していると思います。」

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浅倉:「中開ける人が増えそうですね。次は何色にしてるのかな?みたいな 笑 開けちゃいけないんでしょうけど 笑」

(※注:分解すると保証対象外となります)

浅倉:「JD-Xi発売の話を聞いて、とにかくうれしかったですね。今、その場で音を作って繋いで遊べる、小型のガジェットタイプ製品は多いけど、なかなかプロの現場では使いにくくて。なぜかと言うと、再現性の問題があって。その瞬間は面白いんだけど、今の(設定の)かかり方が面白いから、なんかの曲に使ってみようかなとか、思っても、同じことができなかったりとかして。JD-Xiは、ツマミをぐちゃぐちゃして遊んで、その場で音作りを楽しみつつ、全部まとめて1音色でメモリーに入るから、もうそこにモチーフが出来上がってしまえば、いつでもそれを呼び出して再現できるっていうのは、JD-Xiの便利なところだと思います。音楽が破たんしないで作れるから、現場で使うのにも全然怖くないですね。」

三木:「プロの方に使って頂いて嬉しいです。」

浅倉:「JD-Xaに関して、ずいぶん派手にしましたねぇ…笑。見栄えがかっこいいとテンションあがりますね。で、アナログと言いながら、懐古主義じゃないっていうところがいいですね。さっきの社長のLFOのスピード話もそうですけど、現代並の変調がかけられるっていうことで、ダブステップとか、エレクトロサウンドをアナログで作れちゃったりとかして、なおかつデジタルサウンドのPCMも入っているので、なんていうか、普通プロのアナログ系の音とピアノ系の音って、シンセを2台持っていかなきゃいけないんですけど、言ってしまえば、1台で済んじゃうし、レイヤーもできて、とても便利なシンセですね。ライブで実際JD-Xaを使ってるんですけど、弾いているシンセリードの音は、ほとんどJD-Xaですね。」

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-お互いにQ&A-

三木:「最近、プロのミュージシャンがお金を稼ぐのは、なかなか難しくなってるんじゃないかっていう印象があります。それはインターネット発達して、CDが売れなくなったりとか、使っている機材にプロとアマの差がなくなったりとか、逆にそれはチャンスもあるかなというところなんですが、こういった時代に、プロとして、あるいはこれからプロを目指す人が、生き残っていくために、一番大切なことってなんでしょうかね?電子楽器メーカーとしてお手伝いできるところとか、期待しているところがあればお伺いしたいな、と。」

浅倉:「そうですね、時代は常に変わっていきますよね、レコード、CD、配信、というふうに。僕が貫いているのは、音楽に対してピュアな姿勢でいることですね。音楽は何をすることだ?っていう姿勢を大事にしています。あとは、(楽曲制作で)乱暴な作り方も、今の時代やろうと思えばいくらでもできちゃうんですけど、そこに常に真摯な気持ちで音楽と向き合うっていうのが大事ですよね。あと、常に探究心を忘れちゃいけないな、っていうのもあります。常に自分で新しいことのトライするっていう。それで、もっと言うと、そういった探求心をくすぐる楽器って自分達では作れないので、ローランドさんのようなメーカーが、次世代の音が出る、みたいな楽器をリリースしていただけれると、(プロミュージシャンが)探求心をくすぐられて、また新しい音楽ジャンルを生み出そうかなという流れがができていくと思います。なので、そういった(真摯な)「姿勢」と「探求心」ですかね。これを忘れちゃいけないですね。」

三木:「メーカーも同じだと思いますね。そういった「姿勢」と「探求心」っていうのは。「機材」ではなく「楽器」を作る上で、非常に重要だと思います。」

浅倉:「でも意外とあるんじゃないですか?目的とした機能と違う使われ方することとか?」

三木:「よくありますね。それがキャラクターとなって音楽の中で生かされていくっていう。その辺を探すところが、プロのミュージシャンの素晴らしいところだと思います。試行錯誤というか、失敗を恐れずにっていうのが、音楽でも楽器でも非常にあると思うんですけど、(製品開発において)無難なところを狙ってしまうと、それなりな製品しかできませんから、失敗も含めてチャレンジかな、と思いますし、勉強も大事ですよね。音楽をどれだけ聞くかとか、他のメーカーの楽器を見るかとか、そうした本気度というか、パッション(情熱)で、作られていくものだと思いますね。」

浅倉:「AIRAシリーズが出た時は、びっくりしました。昔の回路をACBテクノロジー(アナログサーキットビヘイビア)で再現したということだけじゃなく、最新の SCATTER やシーンメモリーみたいな機能があって、デジタルで制御できる正確さがあるからこそ、復刻機だけど未来が見える、そんな印象を受けましたね。」
(AIRA特集ページは、こちら。)

三木:「ローランドのテーマがずっと、WE DESIGN THE FUTURE なので。あと、必ずプロに使ってもらえる楽器を作る、この2つがローランドのDNAですね。AIRAシリーズのTR-8なんかは、TR-808 を再現したものですが、アナログだと(パーツの経年変化で)1台1台が音が違ってしまっていて、どれがオリジナルなんだか分からなくなってしまって…。」

浅倉:「カウベルの音が、チューニングが並べると1台1台違うっていうやつですね。」

三木:「ええ、アナログサーキットの特徴とか、性質みたいなものを、ばらつきも含めてそれをデジタルで再現することによって、より良いものを、それ以上のものを可能にする、それがACBのコンセプトですね。」

浅倉:「これからの製品が楽しみですね。」

三木:「そうですね、可能性の話をすると…。いまはPLUG-OUTっていう、ユニークなコンセプトで名機の再現をしていますが、将来的には、いつになるかはわかりませんが、例えば、SH-01の回路で抵抗値を変えたり、マイラコンデンサーにしたら、どう音が変わるかとか…。」

浅倉:「テンション上がりますね。アナログ回路知ってる人は改造してましたもんね 笑」

三木:「あとは、例えば、ARPのオシレーターにオーバーハイムのシンクがかかって、moogのフィルター、JUPITERのモジュレーションがかかるとか。可能性としてはできますよね。そうやって新しい世界を広げていけたらな、と。その発想が新発表のモジュラーシンセにつながっていくんですけど。AIRAも今後は世界が広がっていくと思います。」

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▲フランクフルトメッセで発表された、SYSTEM-500シリーズとSYSTEM-1m

浅倉:「せっかくの機会なので聞いてみたいんですけど、長年ローランドの製品を見てきている身としては、AIRAが出た時に、どうしたんだろ?キターッ!って思ったんです、そしたら今度はJD-Xaが出てきて。急に(製品の方向性が)変ったな、という印象があるんですが、何かそうなったバックストーリーとかあるんですか??」

三木:「AIRAを動かしているチームと、JD-Xシリーズを動かしているチームは、全然別のチームなんですよね。実は、ローランドは昔からこういうことをやっていて、かつてJX-3PやJX-8Pというシンセがあって、本流のシンセチームとは別の、長野工場のチームが開発したシンセなんです。ベンチャー企業の集まりみたいな会社だったんです。今回もそれぞれのチームにユニークなコンセプトがあるのなら、やってみようか、ということがスタートポイントです。AIRAのACBは、単なる再現だけでなく、デジタルでやることの可能性とかシステムアップで世界を広げていこうとしていますし、一方でJD-Xaは、デジタルであろうがアナログであろうがモデリングであろうが、手段はこだわりがなくて、ローランドの持てる技術で特徴のあるシンセ、Xaならではのキャラクターを持ったシンセを作りたいな、ということでやっています。

それぞれの世界(チーム)で発展することもできるし、生み出したエンジン(コアと言っていますが)を組み合わせて、また違うものを生み出すとか、そういったシナジーを生み出している会社なので、そういったアプローチをこれからもしていきたいなと思っています。」

浅倉:「そういうチームの色が、それぞれのLEDの色に出ているみたいな感じなんですかね…? 緑チーム、赤チームみたいな笑。作っているひとの哲学が通じるというか、すごい大事なことですよね。」

三木:「これからもローランドらしいこだわりと思いを込めた楽器を提案していきたいと思っていますので、是非使ってみてください。」

浅倉:「そうですね、そんな魂が込められた楽器を使って、僕も魂を込めて音楽を作っていきたいと思います。探求心をもって新しい音作りをしていきたいなと思います!」

浅倉さん、三木社長、どうもありがとうございました!

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■Roland/JD-Xi 商品ページ
■Roland/JD-Xa 商品ページ
■Roland AIRA SYSTEM-1m

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